すし詰めラプソディー/楠木理沙
すし詰めの車内で私は玉子
握りの玉子じゃない
握りの横に添えられた 数学の図形に似た飾り物の玉子
入り口の支えに身を預ける
頭の焼印を日差しが照らす
不意に電車がカーブにかかると
バランスを崩したネタたちが ぐしゃぐしゃに混ざり合った
崩れたシャリたちは茫然自失
車内は豪華で乱雑なちらし寿司
私は玉子
凛として立ち続けた
終点の駅
改札をくぐると大将と奥さんが迎えに来ているに違いない
きっと驚きの表情を浮かべて抱きしめてくれるはずだ
ホームに降り立つ私の頭の焼印を 夕日が照らしていた
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