彼は殺し屋/相良ゆう
赤黒いどろどろの液体が
指の間から溢れ出す
私はペンを引抜いて
今度は胸元に突き刺した
彼は殺し屋
廊下に無様に倒れこむ
喉と胸を押さえて倒れこむ
私はなおも執拗に
ぐちゃぐちゃになるまで突き刺した
視界はまだ白いまま
彼は殺し屋
私を殺した殺し屋
許せるわけなんて無い
完全に動かなくなるまで
徹底的に突き刺した
視界はまだ白いまま 音までも無くなった
彼は殺し屋
みんなが彼を見つめている
面影も無い彼を見つめている
私は自分の喉元に触れる
そこには傷なんて無い
一滴の血も流れていない
みんなが私を見つめている
音と色の戻った世界に
静かな狂気と紅い凶器を握り締め
笑みさえ浮かべる狂った私
みんなが私を見つめている
みんなが私を恐れている
私は殺し屋
殺し屋を殺した殺し屋
40人の教室から生まれた
紅く染まったボールペンで
今度は誰を狙おうか
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