花について三つの断章/前田ふむふむ
1
真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ流れると、
橋はひとつ生まれて、
絶え間なく、うすく翳を引いて、
川岸に繋がれた。
度々、橋が風の軽やかな靴音を鳴らして、
街のあしもとで囁いていると、
あなたは、雪の結晶のように聡明な純度で、
橋のうえから、
ひきつめられたアスファルトの灼熱のまなざしを指差して、
「砕かれた石の冷たさは、一筆書きの空と同じ色をしていた。」
(人は言うだろう、
(過去が、垂直の心拍を一度だけ
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