『深海魚』/東雲 李葉
誰も居ない街、ひとりきりで。
闇に呑まれる影を見ている。
冷たい瓦礫の底に埋もれて、
太陽は今日もどこかに沈んでゆく。
閉じれぬ目蓋は孤影を映す。
絡まるような細い糸を、かわして。
光を知らない子供たちは親の形を探している。
黒より深い闇の中、声は泡になって消えてゆく。
時々訪れる強い光に怯えながら、
硝子の向こうを盗み見る。
興味を捕らえて悦に浸る、
目蓋を持った奇妙で愚かな生き物よ。
誰も居ない街、ひとりきりで。
居なくなった誰かを思う。
閉じれぬ瞳を濡らしながら、
泡を吐いて叫び続ける。
誰も居ない街、ひとりきりで。
逸らすことの出来ない闇に佇む。
親を探す子供たちの声が、
泡になって立ち上っていく。
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