濡れた布団 /
服部 剛
信号が赤になり
車を停めると
予報外れの雨粒を拭う
ワイパーの向こうに
頭を霧に覆われた
高層マンション
霧のちぎれる間に覗いた
バルコニー
干されたままの布団がひとり
小さい姿で雨に濡れ
出かけた住人の帰りを
じっと待つ
信号が青になり
ハンドルを握るぼくは
自らの道を前に見据え
心に纏(まと)わりつく無数の塵(ちり)を
振り払うように
ふたたび アクセルを踏んだ
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