少年と老婆/かとうゆか
 
 老婆はいた
 透明なアトリエに
 少年とともに

 パレットの上ではいつも
 色がつくられている
 新しい色は
 ひょっとしたら 美しい色
 かもしれない

 ふたりはひとりで
 完成することのないキャンパスという窓
 にうつる世界を眺めている

はじめに持っていた色を
すべてなくしてしまってまで
世界はどうして
濁るのかしら

 と呟いたのは老婆

 透明な少年は何か返事をしたが
 透明な声だったので
 なんと言ったか知れない
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