フルムーン・ラプソディー/渡 ひろこ
まばらな枯れ葉を飾った街路樹
細い枝先が交差して編んだような
小枝の投網にひっかかり
捕われてしまった晩秋の月
きっと月の頬には
網目の痕がついているだろう
憂鬱な月の溜め息が
大きな冷気となって
背中に圧し掛かる
急かされるように
コートの衿を立て
キリキリと尖ったヒールで
カツカツとアスファルトを響かせて
虚勢をはって歩くのは
背後で星屑を吐きながら嘆く
月の戯言を
退けるためではなく
アノ人の影が
薄紫のストールとなって
ふとした透き間に
思い出で私を包もうと
密やかに追いかけてくるから
強がらないと
すぐ
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