お風呂のこと(1)/西藤ウサギ
まだ夏だというのに部屋は霜が降りてしまった
吐く息は牛乳みたいに濃い白で
手も足も真っ赤になってうまく動かせない
そうだ、
わたしがぴったり収まる浴槽に湯を張ろう
蛇口を捻ると出てきたのは真っ白い粒で
それはよく見るとお米のようだった
仕方なしにお米でいっぱいになった浴槽に体を沈めた
ゴソゴソとお米のお風呂に浸かっていると
不思議なことに部屋の霜が溶けて
白い息は見えなくなった
けれども手と足の赤みだけは
いつまでたっても消えてはくれなかった
ザザザーっと音をこぼして浴槽から出ると
真っ白に輝く米粒からにゅっと突き出た赤い手足のわたしがいた
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