出会った人々についての話/吉田ぐんじょう
戻ってくることはないだろう
わたしは差し入れの三ツ矢サイダーを
二つとも飲んでしまってから
空を仰いだ
最後まで名前を知らないままだったな
と思いながら
・
虫をたくさん飼っている人に会ったことがある
その人はおなかの虫を始め
体中の到るところに
様々な虫をさ迷わせているような人だったけれども
わたしとは遠い親戚に当たるらしく
法事の席で隣合わせになった
その人はずいぶん長いこと
むじむじと動きながら正座をしていたが
読経が終わると
様子を観察していたわたしを悪戯っぽく見やって
足を少し持ち上げて見せた
すると足の裏から
ざらざらざら
と黒い小さな
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