収穫/はらだまさる
 
ている、さぁ、勇気を出しておまえは更に歩を進め、血の沼に沈んでいくことを選択するだろう、さぁ、父親の血の、その沼の中におまえは全身が埋まっている、すると突然巨大な滑り台のように、タイムスリップするように、物凄い勢いで下へ下へと落ちてゆくだろう、どんどんスピードを上げて落ちてゆく、さぁ、たどりついたよ、のぞいてごらん、ここは北極か南極かどちらかの氷上だ、気分はどうだい、とても気持ち良いはずだ、さっきよりもおまえの表情は明るくなった、ひらかれた空間、冷たい空気を恐る恐る吸うと、熱を帯びたおまえの身体だけが極まっている、強力な磁場、溶けてゆく足元、皇帝ペンギンがゆれている、鯨がぼろぼろと涙を流している、足元の氷のなかには屋久島の縄文杉がきれいによこたわっている、その光景が仰木の棚田に実って、おまえはぬかるんだ土に足を埋もれさせて、出来るだけ腰を低く、美しい浜辺に落ちた大量のごみを拾うように、朝陽と満月に照らされながらそれを刈り取ると、世界が息を吹き返す、おまえに降る、銀色の雨、
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