色のない自転車/hhhma
背骨のひとつひとつが
はっきりと「かなしい」と言っていた
自転車の上は 夜
星の流れる音は多分
ゆっくりと漕ぐ車輪の音に似ていた
あの夜に
22年と半年生きたことで
とても重くなった私の心は
そっと破れて
私を乗せた自転車の
ゆらぎ、ゆらぎ、ゆらぎ、
その回転に巻き込まれて
世界にはじめて生まれた
あたらしい色で
あたらしい形で
透明なわだちに散りばめられた
美しいけど見ることができない
尊いけど永遠に届かない
あの夜
あの夜に失った心は
あなたの瞳に映る曲線
あなたが握るてのひらの汗
あなたの、絶望
しっとりと湿った体をつつんだ
涼しかったあの夜が消え
静かに輝く朝が
あの夜は夢で、ぜんぶ、嘘、と言った
「あれはホントだよ」って
私が言い終わる前に
朝は
強い白い光で
ぜんぶ ぶちこわして
新しい青い自転車の鍵を
テーブルの上に置いて
「ぜんぶ、嘘」ともう一度、言った。
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