お絵かき/shu
 
ここではまるで反転したかのように
辺りは真っ暗で影だけが白い
「言葉」という絵の具を
ぼくたちの真白い影に落として遊ぶ

「あい」は心臓になり
「くう」は胃になり
「ほしい」は生殖器になり

どす黒く赤い心臓にむかって
「あい」と叫ぶ
心臓はどくどくと律動して膨張する
「くう」と叫ぶと
胃がくねくねと捩れて膨らむ
「ほしい」と叫ぶと
白い影がうれしそうに震え
ぼくの性器が螺旋状に伸びて
きみの性器にくっついて
互いの臓器を吸い始める
心臓も胃も腸も肝臓も膵臓も
笑うように震える

あい ほしい あい ほしい あい あいっ

狂ったようにぼくたちは叫ぶ
影は絡みあい混ざりあい沸騰し膨らんで
ひとつの塊になり渦巻き燃える太陽となって
爆発する

そうして漆黒の宇宙のようなキャンバスに
真白い胃だけが所在なく
風船のようにふわふわと漂って
キャンバスの外側では
おたまじゃくしのようなぼくたちが
頭をくっつけあって
くすくす笑いながら回っている



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