顔/ヨルノテガム
消すのに
幸いしていたのかもしれなかった
私はこの悪魔的な変化の深みに気づいてしまったわけであるが
美しさの中にも痛々しさを
女神の中に阿呆を
若人の中に老婆を(これらはその逆にも作用する)
見えてしまう心持ちというのは
タチの悪い毒の痺れのような目くらましであった
能面は影が差すごとに表情が変わるというそれを
生身で実感する酷さは 賞賛をも、感嘆をも許さない
しんとした
首締めによる
呼吸の薄さの中に居るようなもので
人間に対する底抜けの寂しい思い(総じて)を
拾い取り集めていく行為者に
ただ私はなるより他はないように思われた
そして
私は
ついに
こんな言葉を吐くのだ
「ある存在が他のある存在を知ることで
意味消失することは よくあることでしょうか」
女がふと、
誰かいい人と結婚したいわ というときの顔は
年相応の普通の女の顔に戻って見えた
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