珠/池中茉莉花
 
ゆき子は手に生命を宿した

ある冬の日だった 
ゆき子は凍えながらも 
大好きな白粉につつまれて 
近くの店に出かけていった 
心の中でレミオロメンがながれている 
そのうち、しばれはすうっと溶けていった

そのときだった ゆき子のぽこんと出たおなかの真下が
ふくらんでいるような気がした
ひとに気づかれないように、そうっと右手でふくらみに触れた

 「いま、子宮に生命が宿った」

「絶対そうだわ」
ゆき子は 何か感じることがあるとすぐ走り出す ペトロそのものになった 
しかし 途中で はたと思いとどまった 
「転んだら大変」
はやあしで家へ

300万もの
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