月/clef
 
よし、いくぞと手のひらを結んで、云ったはなから
溶けてゆく落胆の月光。饒舌な千条の筋が、微星の
囁きをかき消してしまうので、空はたちまちのうち
に白く濁った。空気の粒を水の粒に変えて、孕みな
がら嫉みながら愛おしみながら。引力の桎梏から逃
れられず、さりとて問いの答えも訊けず、月見草の
ように立ち枯れてしまうより、いっそ湿った白濁に
身を浸してしまえれば。まだ、満ちない。今夜はま
だ、満ちていない。面を光にかざして、云い出せな
かった約束を思う、中秋名月


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