悲しみの大地ルアンダへ/渡 ひろこ
 
20世紀の赤黒い染みが
今でも時折りフラッシュ・バックする


黒い大きな瞳が見たのは何か


虐殺か
暴行か
母の死か


彼らの瞳の奥の悲しみを
計り知ることはできない


唇から歌を奪ったのは誰か
笑みを消したのは誰か
累々とした屍の山のせいか






荒涼たる大地に
スコールが彼らを打つ
母を
その胸に抱かれる幼子を


スコールよ
この悲嘆の民を打つなら打て
そして願わくは


憎しみを
対立を
殺戮を


その容赦ない勢いで
洗い流しておくれ






1994年
彼らに一筋の光明が射すように
果たして神は
祈ったのだろうか









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