残暑/八布
体が
向かい風にほぐされる
気の遠くなるような 長い
坂道で
すっかり気が抜けた街は
午後の光に洗われて
いつかどこかで見たような色合いに
染められている
道に落ちた影の輪郭や曖昧な空気や
あくびの後のような空が
夏が終わったことを
繰り返し僕に諭すのだ
人影はなく
踏切に差し掛かったところでようやく
不安定な姿を見たが
それはすぐに消えてしまい
僕はその蜃気楼に
名前をつけてあげたかったなどと思う
でも大丈夫
きっとまたすぐに会えるよ、と
耳元で誰かが
すばやくささやく
九月に似合うものは
青と白 そして
沈黙
憂鬱ではないけど
少しだけ退屈だ
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