telescope/000
 
電車に乗ってきた老婆は
青い花束を抱えていた
大人になって見えなくなったもの
子供の頃に見えなかったもの
全てを詰め込んでおける箱は無いから
次の駅へ向かう

電車を降りていった少女は
左手に金魚を泳がせていた
大人になれば見えるもの
子供にしか見えないもの
全てを映し出せる鏡は無いから
音を立てて走る

転がったビー玉
駅前から広がってゆく
転がったビー玉
迷路みたいな此の街を

覘き込んだら
見詰め返すのは 僕自身
現実が生きている

君がいたら
遠くまで見える気がする
だから傷付けないようにそっと
優しく持ち上げる
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