虹と観覧車(短編)/宮市菜央
っぷりと汗が滴になってまとわりついていた。仰向けの状態でしばらくじっとしていると、胸から脇腹へと一筋、汗が滑り落ちた。肌を滑っていく汗の筋の感触。わたしは昨夜の男のなまめかしい指の動きを思い出した。わたしの肌の上をゆっくりと蠢く男の指の動きは汗の滴が滑り落ちるのに似ていた。
わたしは男を起こさないように注意しながら、ベッドから出た。ブラウスを床から拾い上げて引っ掛け、窓の外を見た。空も白い。窓に近付いて目を凝らしてみたが、雨の粒は見えない。
いったいここはどこなのだろう、ヒントを探そうとして私は窓から見えるものを一つ一つ丁寧にたどっていった。はるか下に観覧車が見える。観覧車は赤一色で塗
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