帰る場所/チグトセ
 
哀しみをうたにしたいのだけど、
感情は言葉になる前に溶解して、
つるりと喉の奥へ消えていったよ

哀しみはどうにか優しくなろうとしていたのか
最後にスープのような、甘い味がした


誰かが今日に美しさを付け足した
それまでは、欠けていたから
暖かい色の川を流して、
そこに魚や模様や音を浮かべた
だけどそれらは僕の前で
優しく記号になったんだ
そう、きっとぜんぶ


いつも、どこかしら
不器用な添加物が入り混じって
大袈裟な悲嘆をうまく使えない

思い出たちはその川に浮いていることに
決めたみたいだった

僕は何かを忘れたまま
またこの季節を繰り返す


九月にはもう日暮れが来て
いつまでもトンボでせき止められている



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