少年B/虹村 凌
 
分と遠くまで行ったと思ったら
次の日にはこの街にいたりして
すこし古い言い方をすれば
神出鬼没な人ですね
それでも相変わらずの煙草の匂いで
ここに居たのは君なんだなって
少しだけわかるんです
相変わらず珈琲は何も入れないんですか?
僕は時々
クリームと砂糖を入れるようになりました
これもこれで悪くないと思います

ところで今日は
君にひとつ相談をしようと思っているんです
君が前から知っているように
僕には大切な人がいるんだけれども
それが問題になってしまいました
気付いたら僕は包丁を持って立っていたんです
どうしたらいいですかね?
もう三日になります
右手から包丁が離れないので
今は左手で書いています
汚い字で申し訳ないけれど
答えてはくれないでしょうか
戻る   Point(2)