ゆうやけ/こうや
雨音はうるさく感じない。
胎内にいた頃の音に似ているのだろうか。
本を片手に聞き流すラジオのように
傍らでそっと邪魔をせずに正座している。
垂直に降る水の簾をかいくぐり、その向こうにある朱を思う。
まんまるい太陽が海に浸かって全身を沈める刻限のことを。
一縷の望みを託し朝に放った千羽鶴はその夕日に焼け焦げ、
水面と接触したと同時にジュっと小さな音をたてた。
その刹那に立ち昇るのは水蒸気。
小さな水に、小さな気体に、小さな呼吸源に群がる諸々の生き物。
生きているのか死んでいるのか判らないものが一番怖い。
夕焼け日焼けのメロディが流れて肌がひりひりし始めたら、
南に自転車を走らせようか。
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