つたう かたち/木立 悟
誰かの何かになれないと知り
片方を閉じ星を見つめた
道のむこうの道を見た
風はひと葉にひとつあり
ひたいの上で水になった
指のはざまで光になった
生まれたばかりの宙宇の
そのままをわたる色
歩きつづける影の柱
人の柱 羽の柱
立ちつくすかたちへ
あつまるたましい
ついばみにくる
すべての生きものが
ついばみにくる
むずがゆく生まれる笑みさえも
小さな口でついばみにくる
長い雨のあと
葉と羽と光と鱗
唱うものの口もと
ふせられたみどり
ついばみにくる
ついばみにくる
風とくちびるの震えのはざまに
挿し入れられる手の指
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