生態系の封印/狩心
 
風のように通り過ぎた
誰も掴めなかった
人一人の心を
誰も癒せなかった
大人達が自分の腸を道端にぶちまけて
「奇形…」という言葉を残し
自らの血と
骨と
皮膚感覚を
自らの恐怖を
愛を
黒く硬い雨の通り道
石版の表面に刻んだ

子供達に残された世界
体は既に
解体されている
人里離れた村で
香水の香り
口紅の匂い
薄紅色に火照った体を
鞭のように撓らせて
硬く青い竹を
幾つも切り裂いて
そこから放たれた命の光
沢山の童話と
架空の人物を生み出した
気化された生が
気化された社会に戻される時
完全に一つとなって
罪の意識も消えた
人々が寝静まった頃
大都市の地底から
「戦争…」という言葉が聞こえてくる
日の昇らない世界で
また一人また一人と
機械になっていく

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