両刀論法の彼方に/榊 慧
 
た。

常に孤高にあれ、常に強靭であれ、常に、高みを見上げよ。
そう思い、そう生きてきたはずの自分のこの様は何だ。

言われなくとも理解していた。

高みを目指さねばならない。
守らなければならないものが或る。
それは、一時の感情で見失うべきことではないはずだ。
「戦わねばならない」

己、将来、全てのものと。

足元から崩れるような感覚を意識した。
すぐ傍まで近付いていた闇をはっきりと理解したような頭痛に似たような妙な痛み。

屈辱をはっきりと感じた。


情けなさと空虚で、いっそ殺して欲しかった。
自分には、守らなければならないものがある。
欲しい高みがある。

甘さが自分を崩すと、理解しているのにも関わらず。
矛盾が、自分を甘く食む、その痛み。

両価性によって人は、生きている。
そのジレンマの名は、



オクシモロン・エラト。

両刀論法の彼方に。



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