誰かのことばかり考えている/吉田ぐんじょう
ねむるのも
うたうのも
昔から一人だったし
多分これからも一人なんだろう
ならば
誰かなんていないのだ
誰かのことを考えるのなんて
まるきり無駄なことかもしれない
そう思って
靴を脱ぎ捨て
ばら味の二酸化炭素を吐き出し
庭に植えた植物を抜き
バッグを置き去りにして
出掛けてみた
自由だった
身が軽かった
だけれど
ひどく寂しかった
死にそうなくらい寂しかった
だからわたしはやっぱり
誰かのことを考えながら
生きてゆくことにした
わたしが欲しいのは
たすけるべき誰か
ではなく
誰かをたすけられる強さを持った自分
だからだ
そうしてわたしはうろうろと
今日も誰かを探して歩く
庭には新しくばらを植えた
今が盛りとばかりに咲いたばらは
風に揺られて
すこやかにわらっている
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