誰かのことばかり考えている/吉田ぐんじょう
 

何が女だろう

そういう気持ちでわたしは今日も
短い脚をせわしく交差させ
こころもち猫背のまま
歩いてゆく



誰かに褒めてもらいたいが為に
庭に植物を植えた

何という名前だか知らないが
今朝るり色の美しい花が咲いた

だけど
待てども待てども
誰も通り掛からない

誰でもいいから
きれいだね

ひとこと
言ってくれさえしたらいいのに

それだけでわたしは
この上なく満足するのに

三日経っても誰ひとり
庭の前を通り掛からなかった

仕方が無いので花を手折って
雑踏の中に立ち尽くしてみたものの
人は辺りを行き過ぎるばかりで
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