夕暮れの光景の彼方から/前田ふむふむ
り、
耐え切れずに、
街頭のやわらかい喧噪に浸るために、
窓をあけて、心臓の高まりを、
あしたの希望へと接続していった。
わたしは、新しい服を着て、新しい革靴を履いて、
見慣れていて、顔がわかる、
透明な硝子つくりの街を追い越して、
あらかた、透けているような人並みを潜り抜けると、
切りたつように、
眩しいブルックリン橋が、あらわれた。
嘗て、不毛な検閲がおこなわれた、蛇行の道を辿り、
わたしは、歩幅を伸ばして、橋梁をわたる。
風が切るように吹いて、懐かしい匂いとともに、
東京方面と、断続的に、
大きく書かれた道路標識を追いかける。
時代が要求した、
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