浜辺のうた、かた/
銀猫
夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く
九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませる
真夏日の陽炎に
恋文は焼かれ
綴られた言葉は
ひとすじの煙になって立ち上り
また、
恋を終われなかったわたしは
細波のうたを
乞うている
青、
深く泡立ち、
なお青い波、波
濡れた砂浜を歩けば
片貝の欠片に痛む
青の浜辺に
ゆめが打ち上げられている
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