マジャール・ダー/たりぽん(大理 奔)
神が住むという山の麓は、瓦礫だらけの扇状地で、そ
こに掘られた深い母井戸を彼は「マジャール・ダー」と
呼んだ。この場所から井戸の水面を見ることはできない。
カレーズと呼ばれる地下水路はここを水源とする。暗き
深き闇の奥で湧き出すものがあるのだ。
地下水面が下がると母井戸はもっと高い場所に、もっと
深く掘られるのだと、白い歯をぎらつかせる。彼は井戸
掘り職人だ。32歳になるがまだ見習いなのだという。
井戸の水はそこから30キロも離れた集落のはずれに
流れ出すのだという。何百ものカレーズが町を潤すのだ
という。麓に目をやると、巨大な砂漠の真ん中に染みの
ようにポプラの緑が
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