文体について、経験について/んなこたーない
は、ギターならばWes Montgomeryが「Full House」で取りあげた
「I've Grown Accustomed to Her Face」、ピアノならば「別れのワルツ」の、
共にサワリの部分を弾くだろう。
「I've Grown Accustomed to Her Face」を聞いたUの反応。
「……、上手いですね」
もしもひとに「何か弾いて」と注文するなら、気の利いたコメントのひとつやふたつ、
前もって用意しておくべきである。
ぼくはこの人生、すなわちこの二十数年のあいだ、一体なにをしてきたのだろう?
いっこうにマスターできないことが、あまりに多すぎる。
二十数年といえば、職人ならすでに独り立ちを始めていてもおかしくない。
ぼくのどこかに何か欠陥でもあるのではないか。本気でそう疑いたくもなる。
そして、今日ぼくは新たにひとつ気づいてしまった。――上の前歯の裏側を、上手く磨けたことがない。
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