ジオラマ/悠詩
ルージュを差してスクランブル交差点を闊歩する
マネキン
サングラス越しのレーザー光線が
斜めに風景を切り取る
溶けて秋風に癒される切り口は
ぼくには見えない
エナメルメッキを貼った乳房とくびれに
心臓の表面が焦がされる
あるいは地球儀を愛する数学者のような
最終定理も見いだせないまま
発情が吸い取られるのが恐くて
ノースリーブから生えた腕を折る
ひずみをつかさどる免疫酵素のような
地動説との一体感
マネキンと腕は
裏路地のゴミ箱へ
鯨袋に包んで
燃えないゴミ箱へ
ハイヒールの残したサイレンに
アスファルトから取調室が生えてくる
株価下落のせい
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