ユーリイ・シンドローム/たりぽん(大理 奔)
 
砂まじりの夕焼けが
河口の水面を鏡にして
車のクラクションまでが
赤方偏移すると

空がどこにあるのか
行方を見失ってしまい
だんだん宇宙になるその正体を
冷たく知ることになる

鏡像の銀河に波紋を残して
沖に出て行くイカ釣り漁船たちの
十連の明かりの群れが
沖でまばゆく放たれれば

  月の天文学者たちは
  地球に大きな虚ろがあって
  真夜中には星が透けて見えるのだと
  騒ぎ立てていないだろうか

今夜までもが
境界線をおぼろに失い
真昼は反転することを
僕は眩暈で、気づく

何もかも見失う
うそっぽいまぶしさと
何もかも見失う
息苦しい暗闇と


  意味も無く輝く光に
  伸ばしてしまう
  その右手と



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