秋雨の土曜日、僕は本を捨て部屋を出た。/
 
物置で一枚だけ埃を被って居たCDを、最初に再生したのは何時のことだったろう。
幾分色褪せたジャケットには、外国の空と外国の田園と外国の少年の写真。僕は窓辺に項垂れて、祖母の形見代わりの古いラジカセに耳を傾ける。
 当時、流行だったこの曲は、既に聴き飽きて耳に諄かったと言うことも有り、十五歳の誕生日を過ぎてそれ以来、僕はこのCDを余り聴くことはなかった。
 けれど、僕も成人し否応無く社会人と為り、仕事で細々と物を書くように為ってからというもの、「人も音楽も小難しい事を云って誤魔化す方法を知らない方がストレートで気持ちがいいし、何よりシンプルで美しいのではないか。」そんな風に感じるように為り、
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