答え合わせ/楠木理沙
 
いくつもの形があることを知らずに
唯一の絶対を求めた
唯一の絶対
全てのことを知りすぎていると思っていた

刻まれたピーマンの存在に気づかなかった
感じないものは存在しない
それが真理だった

ペットボトルの汗に気づいていたら
答えは違っていたかもしれない

身軽になっていたのではなく失っていたのだ
空を飛んだのではなく風に流されていたのだ

マーブル色の空に沈んでいく
冷たい薄荷の味が前歯の裏を刺激する
舌先に甘い感触が宿ることはない

遅過ぎた答えを吐き出した
すでに解答用紙が存在しないことを知りながら


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