知らない黎明/塔野夏子
 
鋭角的な警鐘が
残像する
私の眺めのどこかに いつも

おそらくあの時から
導音を失った私の音階
私はそれを
探しているのか
いないのか
果たして探すことを許されているのか?

この胸の憧憬のすべては
もしかしたらあの警鐘以前の情景への
回帰願望に過ぎないのか――

この手がいくたびも放った透明な遊離線が
いつか知らない黎明の虚空で
輻輳するのをただ待つしか
ないのか――

警鐘の残像は
時折ふいに増幅する
そこから無色の眩暈がわきおこり
私はよろめいてしまう

(主音 上主音 中音 下属音 属音 上中音……)



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