命と6g/rabbitfighter
ど影響を与えないだろうと考えたようだ。
実験体には事欠かなかった。
老若男女あらゆる人たちが裸にされ、拘束された。
結果は奇妙なものだった。
人は死ぬと、6gだけ軽くなる。
生まれたての赤ん坊も、骨と皮だけの老人も。
猿や犬で同様の実験を行ったが、それらの動物に体重の変化は見られなかったようだ。
6gとは、煙草六本分にほぼ等しい。
手記の最後には、次の研究でその6gの原因を探るつもりだと記されている。
しかしそれは終に研究されなかった。
戦争が終わり、平和な時代がやってきたのだ。
男は戦後、製薬会社に勤務し取締役にまでなった。
引退後、家族に看取られてなくなったそうだ。
遺品の中にこの手記も残されていた。
大げさな戒名のついた男の墓前に立って思うことがある。
果たしてこの男の命にも、6gの何かが宿る場所があったのだろうか。
甚だ疑問である。
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