赤いうわばきとたいくかん/吉田ぐんじょう
 
ルが
仕舞われることなく転がっていた

誰にも所有されていないのだから
捨てられることなんてあるはずないのに
捨てられる不安に怯えていた
あの頃からずっと


少し大人になったわたしは
パソコンに
落書きよりも下手な文章を打ちつける
その行為に何の意味があるのか知らずに

どうしようもなく不安になったときには
捨てないで下さい
と呟くことにしているが
わたしの声は空気をわずかに震わせるだけで
届くか届かないかわからない
誰に言っているのかもわからない

人差し指がこまかく震える

わたしはその人差し指で
そっとエンターキーを押す



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