南の端の灯台から/霜天
 
曇り空だった
白い灯台は
空に混ざっていた

5月も終わりだというのに
南の端は寒かった
電線に海鳥がゆれる
風がびゅうっと 鳴った

こんな景色に
あなたを連れてこなくてよかった
寒がりのあなたは
きっと文句を言うだろうから


風がびゅうっと 鳴った


千切れては湧いてくる不安を
支えられながら抱えて
この先が見渡せればいいのにと
灯台に登っても
見えるはずの島は
白と灰色の中

光が伸びて
この先が見渡せればいいのにと
あなたと 私と 未来と

風がびゅうっと 鳴った
潮騒だったのかもしれない

確信も
決心もない
大丈夫だと
潮騒に混ぜてつぶやいてみた
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