夏よさようなら/ふるる
 
もちろん分かっていたの
もう、さようならなんだっていうことは
あんなに熱くはしゃいでいたのに
最近はすごくよそよそしいし
ねっとりしていた風も
そよそよ
蝉も鳴かなくなって

ほんとうにふっつりと消えた
あのお嫁さんを呼ぶ合唱は
でも
ひぐらしも鳴いていたから
分かっていたの

夏よさようなら
今年もありがとう
お祭りとか
花火とか
海のこと
思い出せた
この気持ち
言葉にしようとしたんだけれど

砂浜でつかんだ砂と同じ
指の間からさらさらと抜けていく
肩越しに振り返るけど
もういない

また、来年も会えるよね





                 「うん」


             
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