美術室/
山中 烏流
ることはない
私の名前を
石膏が知ることもない
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ここまで描いて
ふと、手を止めたのは
私と筆だけの秘密で
部屋の真ん中に
一人の女の子が立っている
少し私に似せたその人に
名前はまだ、ない
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開け放した窓から
大きな顔と筆が
私の鼻先を、じっと睨んでいる。
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