美術室/山中 烏流
 
ることはない
 
私の名前を
石膏が知ることもない
 
 
******
 
 
ここまで描いて
ふと、手を止めたのは
私と筆だけの秘密で
 
部屋の真ん中に
一人の女の子が立っている
少し私に似せたその人に
名前はまだ、ない
 
 
******
 
 
開け放した窓から
大きな顔と筆が
 
私の鼻先を、じっと睨んでいる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 










 
戻る   Point(6)