遅れてきた少年の一切合財(その一)/生田 稔
 
、学位を、
それといれちがいに戦地へ
学問に疲れた神経質な父なのに、
子はお父ちゃん、お父ちゃん
淋しい2年間、
敗戦、懐かしい「異国の丘」
焼け跡で焼夷弾の殻であそんだ、
小学五年生
甘いものはなくて
サツカリン、ズルチンなんて知ってつているかい
米不足、戸を叩いた闇屋は
一升二百円を要求、お年玉は十円の時ですぞ
学校の先生も物をくれる親の子供を
贔屓しているとの噂もあつた
僕も勉強しなかったが
もっとしなかったのでも大学でて
新聞社に勤めてるて
不幸のどん底のころ聞いた
十四歳から不良の仲間に
あいつらは気がよくって話せるし
いい奴らだと思ったから

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