遅れてきた少年の一切合財(その一)/生田 稔
と母は後で話してくれた
僕は心が優しいのに
子犬や子猫が可哀そうで、いつも涙が
訪れてくる門付けや獅子舞には金をはたいた僕
京都京都とけなすようだが、他国の人が
くさすほど、わるいところではない、
「そんなら、お茶にでもしましょうか」は
これは訪ねた人の都合をおもんばかって
のことなんだ
義理堅くって、愛想がよくって、思いやりがある
それが京都なんだ
誰も僕を理解してくれない
俺の心を、だれぞしる
たんとは言うまい
それとはなしに、大学は追われ
精神病ということにされ
滋賀県の小さな病院に放り込まれた
社会の大列車は、かく僕を無視
それ以後、22
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