夜の遠く/松本 涼
 
しばらく海を
見ていない

とうに街には
飽きてしまっているけれど

それにもすっかり
慣れてしまった


誰の笑い顔も
どこかぎこちない

それでも疑うことは
何より疲れるので

どれだけ哀しくても
君を思い浮かべる


夜の遠くで
貝殻が擦れ合う
音がしている
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