霧になれない微雨の重力。/クスリ。
霧になり得ぬ微雨の重力/その数値にさへ潰れる脆弱なおまへに/崇高なる鉛筆様を削りつる資格は無ひのだ/
鉛筆様、に、寄り添う古い手動式の鉛筆削りの日記は疑似の傲慢を装う自虐の幻想を語っていた。
語り続ける無機の過去を否定し、秋と微雨にけぶる夜の窓を見ると、かつては、尖る鉛筆様を希求しながら拒絶していた僕の矛盾が夜の微かに、ゆらり、と、浮かんでいる。
僕は既に独りの部屋で鉛筆様、を、待つ。
微雨が澱みのように夜を支配し、時間の小さな隙間から夢に湿り気を与えようとしていた。
ほんの微かにしか聞こえない滴のリズムは単調で細かく、連なる銀糸を吸い込んだ混濁の
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