。が打てない僕がまた、を打つ日/
 
君の、何だか灼けにオヤジ臭い微笑い方が
ポーカーフェイスのこの僕に見事に感染したのはそう、あの夏が終わり随分と時間が経ってからだった。
会社の上司に、年の割に老けているだとか破棄がないだとか、そんなことばかり罵られるのは一向に構わなかったけれど、微笑い方を突っ込まれるのは仕方がないと思えど何だか相当気分が良くなかった。

君が僕に遺した物、切り取ったページを捲るように僕は所構わず、どんな話にでも笑う、笑う、笑う。
昔、電子レンジみたいに暑いだけで他は何もないあの角部屋で転がって僕と君はよく、植物や猫や本の話をした。
大抵、僕は漱石を盾に頷くだけで、君は力尽きるまで実質独りで笑い、喋った
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