狗月先生/よつやとうじ
 
何処か遠くの
坂を流れる
明後日の雨には
耳に馴染まぬ
ぴきぴきが
混じっています

夜の重みで
屋根は脆く
傘の骨刺さる喉が
ひどく不自由で

独りぼっちもまた
手の込んだ
贅沢なのです

部屋の隅のほうでは
鼻を病んだ空腹が
膝を抱え
じっとこちらを
見ておりまして

とりあえず
パンの耳を
欲の耳だと言い張って
与えますが

先生
どうやらこの夜も
適者生存の夜のようで
混紡の息苦しさに
消えそうになるのです
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