にくしみにかえて/木立 悟
 



水や峡谷の国の演者が
水や峡谷の音を奏でれば
それが水や峡谷なのか
おまえの水や峡谷はないのか


孤独が蠱毒(こどく)になるまでに
自身の何を殺してきたのか
それともおまえはおまえのために
ただ他人ばかりを屠ってきたのか


響き鳴りつづける器を残して
演者はひとり去ればいいのか
半年ごとに何も変わらぬ言葉を叫び
仲間とつるんでいればいいのか


うつろな喉に赦された
それがおまえの表現なのか
言葉という名の檻のなかで
赤(アカ)と紅(アカ)と垢(アカ)とa(ア) car(カー)
おまえの{ルビ涎=よだれ
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