くちなし/虹村 凌
 
壊れなかった夜に
あなたの乳房の中で
浅い眠りに落ちていったのさ
どうしたって壊れなかった夜に
あなたの薄い乳房の中で
夢も見ないような眠りに
落ちていったのさ

朝は狂わないままにやってきた
明け方の空には虹がかかって
少しだけ微笑んだのを覚えてる
どうしようもなく狂わない朝の光で
明け方の空に虹がかかって
少しだけ微笑んだのを
覚えているのさ

あなたの薄い乳房を離れて
狭いベランダに出て煙草に火をつける
明け方は苦しいね
くるくる回りながら落ちていくマッチを眺めながら
独り言みたいに呟いたら

あなたは何も言わずに
雨で塗れたベランダに裸足で立つ
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