素晴らしき哉 人生/北大路京介
花屋の娘に恋をして 妻に花束を買って帰った
なにも言葉を 落とせそうにない口を ありがとうの唇で塞いだ
愛人が旅行へ行きたいと言い 出張を装って出かけた
「早く仕事が 終われば日帰りするから」って
「亭主が留守の間の浮気は次回にしとけ」と
冗談混じりに釘を挿しておいた
疲れたベンチで帰りの電車を待っていた
突然 見知らぬ女子高生にキスされた
愕然として 乗り過ごしてしまった
帰りが遅くなってしまって お腹が鳴った
「すばらしきかな人生」 こう呟いて死にたい
野球選手になれなくても 素晴らしき哉人生
愛人が雨の空き
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